ぼくが、ふりーだむ生活をするまで 第15話

投資

第15話「理と情のすれ違い」

――大国歴21年、晩春。

バリアルト村にも、遅い春がようやく根を張り始めていた。 凍てついていた土は柔らかさを取り戻し、花咲く野原には蜜蜂が舞い、村の人々も少しずつ笑顔を見せるようになっていた。

村の悩み事

ユウは、村の掲示板の前で腕組みをしていた。

ユウ
ユウ

「……掲示物が斜めですね。あと三日以上過ぎた告知も混ざっています。整備、必要です」

呟くと、手帳のようなノートを取り出し、貼り紙を一枚ずつ点検し始めた。

そこへ通りかかったミーナが目を丸くする。

ミーナ
ミーナ

「ユウさん、またやってる……」

ユウ
ユウ

「はい。村の情報共有は、公共機関として非常に重要ですから」

ミーナ
ミーナ

「でも、それ、村長も知らない掲示だったりしない?」

ユウ
ユウ

「問題ありません。村政の補佐として妥当な自主判断です」

ユウはきりっとした表情で返すも、途中で紙の角に指を引っかけて

ユウ
ユウ

「……っ」

と小さく呻いた。

ミーナ
ミーナ

「だ、大丈夫? 指、切った?」

ユウ
ユウ

「……軽微な損傷です。問題ありません。再起動、再起動……」

赤の帳面

村の財政は未だ火の車だった。 「雪迎えの宴」で村の名を外へと広げた成果もあり、商人の往来は増えたが、帳簿には赤字の二文字が残っていた。

ぼくは広場の倉庫で帳面を見つめていた。

ぼく
ぼく

「……ほんの少しは改善したけどな。税の支払いにはまだ足りない」

ユウ
ユウ

「現状、収入と支出の比率は6:9。補助金が無ければ即時破綻です」

ユウが、脇に立ってメモ帳を繰りながら言う。

ユウ
ユウ

「ただし、手作業の記録が多く、正確なデータ抽出には再調査が必要ですね」

ぼく
ぼく

「つまり……俺たち、地道にやるしかないってことだな」

ぼくが小さく苦笑すると、ユウも珍しく口元を緩めた。

ユウ
ユウ

「ええ、“手つかずの原野”ですから」

だがその時、村の道の向こうから、馬車の音が響いた。

ぼく
ぼく

「王都から来たって役人……今日だったか」

“剣”のような男登場

バンク
バンク

「王都より派遣されました、バンク=エトフ。以後、よろしく」

馬車から降りてきた男は、背筋の伸びた壮年の男性だった。 整った身なり、清潔な指先、そして何より目つきが鋭い。 年の頃は五十を越えているだろう。雰囲気は“剣”のような緊張感をまとっていた。

ミーナ
ミーナ

「……優秀そうだけど、なんか、怖そう……」

とミーナが呟いたが、ユウは腕を組みつつ一歩前へ出た。

ユウ
ユウ

「ご到着、お待ちしておりました。村政の記録管理と補佐を担当しております、ユウと申します」

バンク
バンク

「……ほう。王都出身か?」

ユウ
ユウ

「はい。政庁にて政策官付を務めておりました」

バンクの目が一瞬だけ柔らぎ、やや肯定的に頷いた。

バンク
バンク

「それは頼もしい」

指摘事項

バンクは村役場(といっても元は倉庫だった建物)を借り、財務の見直しに着手した。

バンク
バンク

「この帳簿……桁の処理がいい加減だな。これはどなたが……」

ユウ
ユウ

「……それは私が預かりましたが、先月まで農具棚の下に……」

とユウ。

バンク
バンク

「計算式が不統一なのは致命的です。王都では通用しません」

冷静な声に、村人たちは戸惑いを隠せなかった。

「なんだよ、まるで俺たちが悪いみたいじゃないか」

「こっちはこっちで精一杯なんだよなあ……」

厨房ではミーナがパンを焼きながらため息を漏らす。

ミーナ
ミーナ

「たしかに数字は大事だけど……なんか、心が無いっていうか……」

ガラス工房ではルグラが窓の外を見ながら呟いた。

ルグラ
ルグラ

「――綺麗に整った帳簿があっても、人の温もりが消えちまったら、村じゃねえよな」

仕事ぶり

それでもバンクとユウは作業を続けた。

バンク
バンク

「この村の記録体系は非常に非効率です。個別帳簿ではなく、統合帳票を……」

ユウ
ユウ

「はい、それなら先日、農具支出・医療品購入記録を一冊にまとめました。仕分けは色別インデックスを用いています」

バンク
バンク

「……優秀だな」

バンクがぼそりと漏らした言葉に、ユウはほんの僅かに目を細めた。

ユウ
ユウ

「恐縮です」

新たな風の予感

そんなある日、ぼくはルグラと話していた。

ぼく
ぼく

「バンクさんは、悪い人じゃないと思う。でも……」

ぼく
ぼく

「悪い人じゃねえけど、合わねえんだよな、ここの空気と」

ルグラ
ルグラ

「……来週、ガラス祭りだ」

ルグラがふと、口元に笑みを浮かべた。

ルグラ
ルグラ

「……あの人も、村の“灯り”を見れば、何か変わるかもな」

その声が、夕暮れのガラスの音に溶けていった。

村の財政は、数字の帳尻だけでは語れない。 この村には、人がいて、暮らしがあって、心がある。

バンクがそれを知るのは、次の話―― 「ガラス祭りの宵」での出来事である。

(つづく)

 大国歴21年
 ここにぼくの村《バリアルト》での村づくりが一歩進んだ。

紹介

バンク=エトフ


年齢:54歳

出身:王都ヴァルトハイム

役職:王都大蔵省 財務指導監/臨時派遣監察官

■ 性格・性質

非常に真面目で融通が利かないほどの堅物。

物事は数値と記録で判断する主義で、感情や空気では動かない。

数十年にわたり王都の官僚社会に身を置いてきたため、現場感覚には疎い。

規律を乱すことを極端に嫌い、「予定外」「想定外」という言葉が大の苦手。

一方で、公平さと誠実さを重んじ、誰に対しても態度を変えない誠実さがある。

次回 第16話「光の瓶と心の距離」

これから村が繁栄していくところをゆっくりですが投稿していこうと考えています。
あと、村の繁栄度は、ぼくのリアルの繁栄度と比例させていますので、気長にお付き合いしていただくとありがたいです。
イラストやストーリはChatGPTを利用しています。

最後に

今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう

バイバイ

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。

タイトルとURLをコピーしました