目次
第5話 「ガラスの灯がともる場所(ルグラ工房、始動)」
日差しの中の、静かな日常
朝のバリアルト村は、どこかゆるやかに時が流れている。

「村長、おはようございます」
ミーナの明るい声が、広場を抜ける風に溶けた。
パン屋の前を掃除する老夫婦、牛を引く少年、赤ん坊をあやす母親。
いつもと同じ村の風景に、ひとつだけ新しい風があった。
それは、村の外れの小高い丘のふもとに立つ男。
ガラス職人、ルグラ。

「……風が変わったな」
銀灰の髪がふわりと揺れた。瞳は淡く透き通る琥珀。
まるで朝日に照らされた溶けかけのガラスのようだった。
彼は無言で炉の火を見つめ、ゆっくりとパイプを取り上げる。

「また吹いてるな、ルグラ職人」
村長が声をかけると、ルグラはわずかに眉を動かした。

「“吹きたくなった時に吹く”のが、俺のやり方だ」

「その割に、毎朝ちゃんと火つけてるじゃないか」
ぼくの冗談に、ルグラはうっすらと口元をゆるめる。
言葉は少なくても、村の空気に少しずつ馴染み始めていた。

「そろそろ――本格的な工房、作らないか?」
ぼくの提案に、ルグラは少しだけ目を見開いた。
そして静かに、ひとことだけ。

「……ああ。試してみたい」
—
工房の建設は、村にとって新たな挑戦だった。
祭りを終えて、ようやく落ち着いたかに思えた村が――
また、小さな灯を掲げようとしていた。
予期せぬ“熱”の問題
「イリアさんの炉……村の木造じゃ耐えられないかもしれません」
集会所に集まった職人たちの前で、村長が資料を広げながら語る。
炎を扱う吹きガラスの炉。温度は千度を超える。
「石材も限られてるし……村の構造じゃ、リスクが大きいな」
「王都みたいな耐火設備もないしね……」
静かな緊張が走る。
ルグラはその空気に口を挟まず、ただ壁によりかかって空を見ていた。

「……俺が考える」

「え?」

「工房の形。場所も。村に合わせて、風が通るように。……それが職人の仕事だ」
ルグラはそう言い残すと、会議室を出ていった。
ぼくは思わず、その背を目で追っていた。
(やっぱり、ただの感性の人じゃない。芯がある)
—
その夜。ルグラはひとり、古井戸跡の丘に立っていた。
風が静かに草を揺らす。
彼の目には、すでに“そこにあるべき形”が見えていた。

「……風が抜け、火が沈む場所。壊れてもまた作れる構造。
俺のためじゃない。“灯”のためだ」
—
そして次の日、彼は村人たちにこう提案する。

「地中に炉を沈め、風と熱の抜け道を作る。
屋根は木と石の組み合わせ、壁はガラスを活かして熱を逃がす」
驚くほど精密な図面と、自然の構造を応用した設計。
一同はしばらく沈黙したが、最後に誰かがつぶやいた。
「……あれ、めちゃくちゃ理にかなってないか?」
「さすが“風のガラス師”……!」
—
こうして、村人総出の工房建設が始まった。
風と光の、ひとしずく
数日後。
完成した工房は、まるで風と光の器のようだった。
石と木で組まれた美しい外観。
窓は南東を向き、朝日が正面から差し込む設計。
イリアが吹いた試作品が、棚に飾られて光を受けると――
まるで村そのものがきらめいているようだった。

「……“灯”って名前、悪くないな」
ぼくの言葉に、ルグラはわずかに頷いた。

「吹き続けられる場所があれば、また形になる。
風を忘れなければ、火は沈まない」
ルグラの手には、新しいパイプ。
そして心には、ここに残る理由が――静かに芽生えていた。
—
その日、村の子どもが言った。
「この村、ちょっと王都っぽくなってきた!」
「ちがうよ! ガラスの村だよ!」
—
ルグラの“灯”は、
村に新しい風と光をもたらし始めていた。

大国歴20年
ここにぼくの村《バリアルト》での村づくりが一歩進んだ。
紹介
ルグラの深堀

■ 性格
• 寡黙で落ち着いた印象。言葉は少ないが、一本筋が通っている。
• 他人との距離を取りがちで、自分から深く踏み込むことはない。
• 作品に対しては極めて情熱的。手を抜かず、完璧を追求するタイプ。
• 自然を愛し、風や光の中に美を見出す感性派。
• 子どもや動物には弱く、懐かれると無言で構いすぎてしまう一面も。
■ ガラス工芸に対する哲学
• 「ガラスは、光と風の記憶を閉じ込める器」
• 「壊れやすいからこそ、美しい。壊れたら、また作ればいい」
• 自然の音、季節の気配を反映したモチーフ(鳥、葉、波紋など)を好む。
• 職人仲間には「技術より感覚で作る奴」と称されることも。
次回 第6話「ガラスよりも繊細な心」
これから村が繁栄していくところをゆっくりですが投稿していこうと考えています。
あと、村の繁栄度は、ぼくのリアルの繁栄度と比例させていますので、気長にお付き合いしていただくとありがたいです。
イラストやストーリはChatGPTを利用しています。
最後に
今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう
バイバイ
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。