目次
第7話「また、風が吹いたときに」
さざ波のような日常

「はい、ミントとカモミールの“初夏の風ブレンド”、できました〜」
村の中央広場に建てられた仮設の屋台。そこに立つミーナの笑顔は、少しずつ村人たちの日常に溶け込んでいた。
タオが王都へ戻り、店を託されてから三ヶ月。彼女は“村の小さな店主”として慌ただしい日々を過ごしていた。
店の奥では、展示用のガラス作品が光を受けてきらめいている。ルグラの作る吹きガラスの器、光を映すモビール、朝露を思わせるビー玉のような飾り玉。
客は多くはないが、噂を聞きつけた村人たちが立ち寄り、「風の工房、良いじゃねぇか」と口々に囁いていた。
その少し先、村長は、工房の前で座り込んでいた。

「……今度は“外”との道を作らなきゃな。村の魅力は育ってきた。でも、見てもらえなきゃ意味がない」
彼はふと、先日この村を通り過ぎた男のことを思い出す。
柔らかな栗色の髪、鋭い観察眼、肩には馴染んだ革のバッグ。
名前は――ソウジ。
その男の言葉が、今も心に残っていた。
『俺は物じゃなくて、“物語”を運ぶ商人さ。心の中に火が灯った時、それが一番の商売のタネになるんだよ』
あれから数日、再び村の風がざわめく。

「――やぁ、村長。ちょいと、湯浴み場はまだあったかいかい?」
振り返ると、あの黒い三角帽が揺れていた。
交わる、旅の軌跡

「いや〜、やっぱこの村、風通しがいいなぁ。空気が旨い。何より、人がちゃんと“生きてる”って感じがする」
湯上がりの髪をタオルで雑に拭きながら、ソウジはくつろいだ様子で広場に腰を下ろす。
ぼくとミーナ、そして工房のルグラもその場に集まり、簡易的な焚き火を囲むようにして語り合う。

「ソウジ、お願いがあるんだ。この村に定期的に来て、作品を外に届けてくれないか」
その言葉に、ソウジは少し驚いた顔をしたあと、目を細めて笑った。

「そいつぁ嬉しい申し出だ。でもな――今は、ちょっと無理だ」
「やらなきゃならないことがある」と彼は静かに言った。

「……東の山の職人、か?」
ソウジは首を横に振る。

「いや、そいつはもう終わった。今度は、“俺の父親の遺品”を届けに行かなくちゃならないんだよ」

「父さんは昔、旅芸人でね。人から人へ、物じゃなく“言葉”を渡す仕事をしてた」

「その父さんが、死ぬ間際に書いた手紙と、1冊の歌集を――とある港町にいる昔の仲間へ渡してほしいって言ったんだ」
焚き火がパチパチと音を立てる。誰も口を開かないまま、ソウジは続ける。

「そいつはもう老いて、耳も遠い。だけど、最後に“あいつの歌をまた聴きたい”って言ってたって、誰かが教えてくれた」

「……だから、届けたいんだよ。“あの頃の歌”を、もう一度。
それが終わったら、また風に乗って戻ってくる。俺の居場所が、ここに残ってたらだけどな」

「残ってますよ。ずっと……。私、待ってますから」
彼女の言葉に、ソウジは目を丸くして、そしてくしゃっと笑った。

「ははっ、まいったな。そう言われちゃ、いい加減な旅はできないじゃないか」

「……風のガラスも、あんたが見てなきゃ意味がない」
それが“風を吹かせた”瞬間だった。
夜風と、新たな灯火
夜、村にふわりと小さな宴が開かれた。
名目は“ソウジ再会記念”だが、皆がどこか嬉しそうに焚き火を囲み、ミーナはハーブティーを振る舞い、ルグラは光るガラスの風鈴を焚き火の熱で鳴らした。
ソウジはその風鈴を見て、ぽつりと呟いた。

「物じゃない、人と物語を運んでるのさ……ってのは、俺の口癖だけどさ。もしかしたら、今度は“運ばれる”側かもな」

「この村は変わる。間違いない。……けど、それを見届けられるかは、俺の心次第だ」
ぼくは微笑んで応えた。

「なら、お前の“次の風”が吹いたとき、またここへ来い。俺は、それまで村をもっと“面白く”しておくさ」
その約束を、誰も口には出さなかったが、確かにそこに“風の予感”があった。
夜が明ける前の約束
翌朝、ソウジはひとりで村を出ていった。
帽子を深くかぶり、肩には例のショルダーバッグ。背には、ルグラの小さなガラスペンダントが光っていた。

「……あの人は、何か大きなものを運んでる。きっと、この村にも、また風を運んでくれる」
ミーナはそうつぶやき、広場の風鈴が、静かに鳴った。

大国歴20年
ここにぼくの村《バリアルト》での村づくりが一歩進んだ。
紹介
ソウジ

■ 性格
- 気さくでおしゃべり、初対面でも臆せず話しかける社交的な性格
- しかし商人としての計算高さも持ち、相手の価値観や空気を読むのが非常に上手い
- 「笑って交渉、黙って値切り」がモットーの現実主義者
- 一方で、いい作品には本気で惚れ込む“目利き”気質もある
- 基本的に中立だが、困ってる人は放っておけない人情派な一面も
■ 名言・口癖
「この村、もしかして面白くなる予感しかしねぇな」
「物じゃない、人と物語を運んでるのさ」
「金にならない? それが一番、お宝かもなぁ」
「おっと、その話、もうちょい酒が入ってからだな」
次回 第8話「風の便りと、届かぬ返事」
これから村が繁栄していくところをゆっくりですが投稿していこうと考えています。
あと、村の繁栄度は、ぼくのリアルの繁栄度と比例させていますので、気長にお付き合いしていただくとありがたいです。
イラストやストーリはChatGPTを利用しています。
最後に
今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう
バイバイ
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。