目次
第2話「それ、いいね」
――村を変えるのは、いつだって小さな“ときめき”から。
朝の村《バリアルト》。広場では、雑貨屋《タオ堂》の開店準備が始まっていた。

「うん、今日のディスプレイは春っぽくリボンでまとめてみようかな!」

「ミーナ、あんまり派手にするなよ? おばあちゃんたちが目ぇ回すからな」

「大丈夫大丈夫っ。おしゃれって“アクセント”が大事なのよ、村長!」
ミーナはタオの手伝いを楽しんでいる様子だった。
前回、ぼくが王都から連れてきた女将タオの雑貨屋は、村に少しずつ根付いていた。
村の娘たちはリボンや小物を手に取り、男たちも「娘に」と言いつつ、どこか照れくさそうに品を選ぶようになっていた。
「なあ、村長。まさか本当に村に“店”ができるとは思わなかったぜ」
畑帰りの農夫が言った。

「まだ始まったばかりだよ。でも……一歩ずつな」
ぼくは少し照れながらも、胸の奥がふわりと温かくなるのを感じていた。
その日の昼、村に一人の旅人が立ち寄った。
腰に革のポーチをつけた細身の青年。旅の道具を最小限にまとめている。

「水を少しいただけませんか?」

「おう、井戸はあっちだ。疲れてるなら、あの雑貨屋で休んでいくといい」
旅人は広場のベンチに腰を下ろし、荷物から何かを取り出した。
――それは、小さなガラスの鳥。光を受けて、虹色に輝いた。

「……なにそれ。すごく綺麗」
ミーナが息を呑む。タオも手を止めて、それを見つめた。

「もしかして、あんたが作ったのかい?」

「いえ、これは南の村《ウィストヒル》の工芸職人が作ったものです。僕は運ぶだけで……」

「ウィストヒル……聞いたことはあるけど、そんな職人がいるとはな」
ぼくは静かに、それを手に取った。
ガラスは冷たく、軽くて、なのにどこか温かい。精巧な羽の曲線、丁寧に焼かれた尾。そこには、職人の魂が宿っていた。

「……これ、いいな」

「村長さん、“それ、いいね”って顔してる……!」

「紹介してもらえないか? その職人さんに」
―――
職人に会いに、村長が動く!
数日後、ぼくは旅人の案内で《ウィストヒル》を訪れた。
村の一角、小さな窯のある工房で、年若い職人が黙々と作業をしていた。

「……すまない、忙しいところ。ぼくはバリアルト村の村長で……」
ガラス細工職人の名はルグラ。20代後半で、寡黙な性格だが、作品への想いは熱い。

「俺が作るのは“音のない風”みたいなもんだ。飾るだけのモノに、命を感じてくれたら、それが一番の喜びさ」
だが、村に来てほしいというぼくのの願いに、ルグラは首を横に振った。

「俺のガラスは、ここじゃなきゃ作れない。温度も、湿気も、火も……全部、この土地に馴染んでる」

「それでも……村の子どもたちに、この鳥を見せてやりたい。ミーナって子が、“目がキラキラしてた”ってさ」
一晩泊まって、翌朝の出発前。ルグラは黙ってぼくに、小さな包みを渡した。

「……試しに、これを飾ってみろ。村の空気と、あんたの言葉が本物なら――そのうち俺が行くよ」
―――
再び村へ、光る鳥の帰還
ぼくが持ち帰ったガラスの鳥は、村の雑貨屋《タオ堂》の店先にそっと置かれた。

「……ああ、また光ってる。今度は、なんだかこっちを見てる気がするね」
ミーナはつぶやき、タオは腕を組んで「悪くないわね」と微笑んだ。
村の子どもたちが、そっと手を伸ばし、そっと見守るその姿に、ぼくは静かに頷いた。

「そのうち来るさ。今度は、ガラス職人の村って噂が広まるかもな」

「ふふ、村長さん、それ目指してるでしょ」

「……ああ、“それ、いいね”って思ったからな」
小さな村で、小さなガラスの鳥が、そっと風を運んでいく。
それはきっと、村を変える最初の風の音だった。
――バリアルト村の挑戦は、今日も続く。

大国歴20年
ここにぼくの村《バリアルト》での村づくりがまた一歩進んだ。
紹介
タオ

名前 タオ
性別 女性
年齢 38歳
名言・口癖
「いいじゃない、田舎。風も空気も、ちょっとだけ人間も、正直でさ」
「甘い顔してると、商売じゃ損するわよ?」
「あたしが売るのは、モノだけじゃない。生き方の選択肢ってやつよ」
次回 第3話「試しの吹きガラス」
これから村が繁栄していくところをゆっくりですが投稿していこうと考えています。
あと、村の繁栄度は、ぼくのリアルの繁栄度と比例させていますので、気長にお付き合いしていただくとありがたいです。
イラストやストーリはChatGPTを利用しています。
最後に
今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう
バイバイ
この物語はノンフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。