資産防衛の切り札!金(ゴールド)の歴史・メリット・デメリット完全ガイド

保有資産

金(Gold)の基本性質

 “金”とは、化学的には元素記号 Au(ラテン語 Aurum)で表される金属です。物理的な性質としては、腐食しにくく、展延性・可鍛性に優れ、導電性も持つ貴金属です。投資対象としての「金」は、地金(金の延べ棒・コイン)、金ETF、金先物、金鉱株など形を変えて保有されます。

投資対象としての金には、以下のような特徴があります:

  • 無利子・無配当資産:金そのものは配当・利子を生みません。所有するだけで収益を生成するわけではない点が株式や債券と異なります。
  • 信用リスクがない(他の誰かの負債に依存しない):金の所有者は、誰かへの債権・債務関係を持たず、貸借対照表の他資産に依存しない。
  • 希少性・物理的保有性:採掘可能量が限られ、貨幣・通貨と異なり無制限には発行できません。
  • 流動性が比較的高い:国際市場で売買できるため、現金化が容易。ただし取引コスト・保管コストはかかります。

金の歴史的役割と変遷

 金は古来より、装飾品や貨幣・交換手段として珍重されてきました。その役割は時代・制度により変わりました。

  • 金本位制時代
    19~20世紀初頭、多くの国が金本位制を採用し、通貨価値を金に裏付ける制度を用いた。(たとえば、通貨と金の交換をある比率で保証)
  • ブレトンウッズ体制
    第二次世界大戦後、米ドルを基軸通貨としドルを金に換える仕組み(1オンス = 35ドル固定)を導入。これにより、各国はドルを介して金と結び付いた。
  • ニクソン・ショック(1971年)
    米国がドルと金の交換を停止し、金本位制は事実上終焉。通貨は各国の信用力に基づく“信用通貨(fiat currency)”に移行。
  • 金の資産・保険としての役割拡大
    現在は、ポートフォリオの分散資産、インフレヘッジ、安全資産(リスクオフ時の逃避先)という立ち位置が強調されます。

歴史的な価格データを見ると、金価格は長期で上昇傾向にありますが、短期的なボラティリティ(価格変動)が大きいため、金をメインの資産とするのはリスクも伴います。


金を資産価値として持つ「メリット」と「デメリット」

✅ メリット(強み)

  1. インフレ耐性・購買力の保存
    • 通貨価値が下がるとき、金は相対的に価値を保ちやすいとされる。
    • 実質金利が低下すると金の魅力は高まりやすい。
  2. 分散効果・安全資産性
    • 債券・株式とは相関が低いことが多く、ポートフォリオのボラティリティを抑える役割を果たす。
    • 地政学リスク・金融危機・通貨ショック時に「逃避先資産」として買われやすい。
  3. 信用リスクがない
    • 金は他人の債務ではなく、所有者がそのまま保有できる物理資産。金融機関の破綻や信用不安の影響を受けにくい。
  4. 流動性と国際価値
    • 世界市場で取引可能、通貨を跨いだ資産移動がしやすい。
    • 中央銀行や機関投資家が保有することも多く、政策・需給の裏支え要素がある。

⚠️ デメリット(弱み・リスク)

  1. 収益を生まない
    • 金そのものは利子・配当を支払わない。価格上昇だけが利益源。
    • インカム目的の投資家には不向き。
  2. 保管・保険コスト
    • 地金を所有する場合、保管場所(貸倉庫など)や保険料が発生。
    • 運搬・管理リスクも存在。
  3. 価格変動性・方向感の不確実性
    • 景気好調時には株式に資金が流れ金価格は下落しやすい。
    • 見通しを外した金利上昇やドル高などのマクロ要因で逆風となる可能性。
  4. 機会コスト
    • 株式や債券の配当・利子収入を逃すため、資産成長性で劣る場合がある。
  5. 流動性・売買スプレッドの拡大リスク
    • 小口保有者が売る際、実勢価格との差が大きくなることがある。

現在の金価格上昇の背景と状況

2025年、金価格は 史上最高値を更新する勢い で上昇しています。理由として以下が挙げられます:

  • 利上げ期待後退・利下げ見通し:市場では米国での金利引き下げの期待が高まり、実質金利低下が金を後押し。
  • ドル安傾向:ドルが弱まると他通貨建ての投資家が金を買いやすくなる。
  • 地政学的不安・金融リスク:国債利回り上昇、政府債務問題、世界的な不透明性などに対して「逃避先需要」が強い。
  • 中央銀行の買い支え:複数の国が自国準備金(外貨準備)として金購入を増やしており、需給面でも支援材料。

 Goldの価格は、2025年10月時点で約 USD 3,886.70/トロイオンスに上昇しており、過去1か月では約9.96%の上昇、年初来では約46.1%の上昇を記録。

 Goldman Sachs は金価格が中期的にさらに約6%上昇するとの予測を出しており、2026年中頃には $4,000/オンス水準を視野に入れているとの見方も。


これからの金・ゴールドの立ち位置(展望・戦略観点)

💡 長期的な立ち位置・役割

  • ポートフォリオの「防御資産」枠
    金は他の資産(株式・債券・不動産など)が逆風を受ける局面で保険的役割を果たす可能性が高い。
  • インフレ・実質金利の動向との連動
    実質金利(名目金利 − インフレ率)が低下~マイナスになる環境では、金の魅力は高まる。
  • 需給構造の注目点:採掘量制約、金鉱山投資抑制、中央銀行の買入傾向、ETFs・先物ポジションなどが価格を左右。
  • 技術革新・代替資産との比較
    仮想通貨(ビットコイン等)が「デジタル金」論議で注目されてきたが、金は物理的裏付けと歴史実績がある。将来は両者のバランスが問われそう。

🔮 リスクと注意点

  • 利下げ見送り・金利上昇リスク:実質金利上昇局面では金価格は圧力を受ける。
  • ドル高リスク:金はドル建ての資産のため、ドル高は金価格の下押し要因。
  • 過度の上昇・調整リスク:短期で過熱感が出ると、調整売りもありうる。
  • 保有コスト・流動性コスト:長期保有でのコスト負担を無視できない。

🎯 戦略的観点からの使い方(ポートフォリオ戦略)

  • エンベロープ戦略:株式重視型ポートフォリオのうち 5~15%を金に割り当ててリスクヘッジする。
  • リスクオフ時のリバランス資産:株式が下落したとき、金比率を上げてバランスを取る。
  • バリュー平均戦略:金の目標価格帯を定め、超過・割安時に売買する。
  • ETF や金先物経由の保有:物理保管の手間を回避したいなら、金ETF(GLD など)や先物・金関連株を利用。ぼくが薦めるのが金ETF

1.金ETFとは?

  • ETF(上場投資信託)の一種で、金の価格に連動する金融商品。
  • 株式と同じように証券口座から簡単に売買できる。
  • 現物を保管する必要がなく、保管コストや盗難リスクもない。

2.金ETFのメリット

  1. 少額から投資可能
    • 1口数千円~数万円で購入可能。
    • インゴットやコインを買うよりずっと手軽。
  2. 高い流動性
    • 東京証券取引所や海外市場で取引できるため、売買がスムーズ。
  3. 分散投資に有効
    • 株や債券と相関が低く、リスク分散になる。
    • 特に「株安のときに金が買われやすい」傾向がある。
  4. 保管リスクなし
    • 自宅に置く必要がなく、盗難リスクがない。

3.金ETFのデメリット・注意点

  • 配当はない(株式ETFと違い、インカムゲインなし)。
  • 信託報酬(手数料)がかかる(年0.2~0.5%程度)。
  • 為替リスク(円建てETFでは為替影響がある)。

4.おすすめの金ETF例(日本市場)

  • 純金上場信託(1540:純金ETF)
    → 国内最大規模、信託報酬0.5%前後。
  • SPDRゴールドシェア(1326)
    → 世界最大の金ETFを日本でも取引可能。
  • NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信(1328)
    → 野村アセット運用、シンプルな金連動型。

5.金ETFはどんな人におすすめか?

  • 配当生活を目指す投資家のリスク分散先として
  • 有事の備えとして資産の一部を金に割り当てたい人
  • 長期的にインフレに強い資産を持ちたい人

📚 まとめ:金を資産戦略にどう位置づけるか

 金は、配当を生まない資産 であるため、「メインで金だけ持って生活を賄う」という性質の資産ではありません。ただし、ポートフォリオ全体の安定性を補強し、下振れを抑える“保険的役割” を担うには非常に有用な資産です。

特に現在、金価格は記録更新の勢いが続いており、引き続き注目されやすい環境にあります。

配当生活を志す投資家の目線では、金は主戦力ではなく「守り・バランス補強」として持っておくべき資産です。時には金価格上昇によるキャピタルゲインを得ることもできますが、過信せず、ポートフォリオの“血合い(株式・高配当株)”を支える脇役として捉えるのが合理的でしょう。

最終判断はご自身で行ってください。

今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう

バイバイ

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