目次
―「高市相場」と「政局リスク」が交錯した波乱の一週間―
こんにちは、マーケットウォッチャーの皆さん。
秋相場が本格化する中、2025年10月第2週(10月5日〜10月11日)は、まさに日本経済と世界市場の“分岐点”と呼べる一週間となりました。
この週は、
- 高市早苗氏の自民党総裁選勝利による政治転換、
- 与党連立崩壊という予想外の政局ショック、
- 米国FOMC議事録や耐久財・小売データなどの景気指標、
- 欧州CPIの結果、
など、政治・政策・経済が一斉に動いた週。
日経平均は週前半に史上最高値を更新しながらも、週末には一転して利益確定売りが優勢に。円相場も乱高下を繰り返し、為替・株式・債券のトリプルボラティリティが顕著でした。
それでは、海外と日本の両市場を軸に、イベントカレンダーとともにその詳細な流れを追っていきましょう。
🌍 海外マーケット:イベントカレンダー&重要度
日程 | イベント内容 | 重要度(0〜10) |
---|---|---|
10/6(月) | 高市氏の総裁選勝利に対する国際市場の初動反応 | 9 |
10/7(火) | 欧州CPI(消費者物価指数)確報値発表 | 6 |
10/8(水) | 米国FOMC議事録公表 | 8 |
10/9(木) | 米国小売売上高・耐久財受注 | 7 |
10/10(金) | 米国消費者信頼感指数(ミシガン大学調査) | 6 |
🗾 日本市場:国内イベントカレンダー&重要度
日程 | イベント内容 | 重要度(0〜10) |
---|---|---|
10/6(月) | 自民党総裁選:高市早苗氏勝利(翌営業日反応) | 10 |
10/8(水) | 高市新総裁による初会見・経済政策方針表明 | 9 |
10/10(金) | 与党連立崩壊(公明党が離脱)報道 | 10 |
10/10(金) | 日本機械受注・輸出統計発表 | 7 |
🧩 個別イベントの結果と市場の反応(詳細解説)
① 10月6日(月):「高市相場」開幕
イベント内容: 自民党総裁選で高市早苗氏が勝利。翌営業日の東京市場で“政策期待ラリー”が本格化。
詳細:
10月4日に行われた総裁選の党員・国会議員票の結果、高市早苗氏が僅差で勝利。市場はこの報を週末から織り込み始め、週明けの10月6日には東京証券取引所がスタートと同時に強烈な買い気配で始まりました。
とりわけ「積極財政」「減税」「科学技術立国」など、成長志向政策への期待が投資家心理を一気に押し上げました。
市場の反応:
- 日経平均株価: 前日比 +2,175円(+4.5%)の大幅上昇。終値ベースで史上最高値を更新(47,944円)。
- TOPIX: +3.0%上昇。特に機械、化学、輸送用機器など景気敏感株が買われました。
- 為替(ドル円): 円安が一気に進行し、150円台後半まで急落。
- 債券市場: 政策期待により長期金利が上昇。10年国債利回りは0.92%→1.02%へ上昇。
背景解説:
海外勢を中心に“アベノミクス再来”と見る向きが強まり、短期資金が一斉に流入。
日経先物の取引量は通常週の2倍に達し、外国人投資家の買い越しが6,000億円を超えました。
一方で、「政策実行に必要な議会多数派の確保」が焦点として浮上し、週後半には政治リスクが再び意識されることになります。
② 10月7日(火):欧州CPI確報値発表
結果: 前年比 +2.3%(予想 +2.2%)とやや強め。
市場反応:
欧州債利回りが上昇、ユーロ買い戻しが進行。これによりドル円は一時152円台へと円安加速。
ただし、インフレ再燃懸念が株式市場の上値を重くし、欧州株は小幅下落。
この動きが東京市場にも波及し、翌日の日本株は小幅反落。
③ 10月8日(水):FOMC議事録公表
内容:
9月FOMCの議事録では「年内1回の利下げを検討」する文言が確認され、金融緩和期待が再燃。
しかし一方で、「賃金上昇圧力は依然強く、インフレ鈍化の確証は得られていない」とも記され、方向感は限定的。
市場反応:
- 米10年債利回り: 4.48% → 4.36%へ低下(緩和期待)
- NASDAQ: +1.3%上昇
- ドル円: 円安一服、151円台前半で推移
- 日本株: 翌日の東京市場でハイテク株中心に買い戻し。AI関連・半導体関連(東京エレクトロン、レーザーテック)が強含み。
解説:
緩和観測が強まったことでリスクオンムードが回復するも、高市政権の政策実効性不安が徐々に材料視され、短期的な買い一巡後は上値が重くなりました。
④ 10月9日(木):米小売売上高・耐久財受注
結果:
- 小売売上高:前月比 +0.5%(予想 +0.3%)
- 耐久財受注:前月比 +0.8%(予想 +0.4%)
市場反応:
強いデータが出たことで、米景気の底堅さが確認されました。
しかし、同時に「利下げペース鈍化」懸念が広がり、米株は上値重く、ドル買い優勢。
ドル円は再び152円台後半へ。日本の輸出関連株は再び上昇し、トヨタ・マツダ・スズキなどが年初来高値を更新。
⑤ 10月10日(金):与党連立崩壊報道
内容:
公明党が自民党との連立解消を正式に表明。
1999年以来続いた連立が崩壊し、政治的不安が一気に表面化。
市場反応:
- 日経平均: 前日比 ▲620円(▲1.5%)
- ドル円: 一時円高方向に触れ152.2円→151.6円へ。
- 長期金利: 政治リスク警戒でやや低下。
- J-REIT指数: 政策不透明感で▲1.1%下落。
解説:
投資家心理に「政権運営不安」「政策停滞懸念」が広がり、これまで買い上げられた内需株・銀行株に利益確定売りが集中。
一方、円高による輸入コスト減を期待して、小売・外食・航空株など一部ディフェンシブセクターは下げ渋りを見せました。
⑥ 国内経済指標:機械受注・輸出統計
機械受注(8月分): 前月比 +1.8%(予想 +0.9%)
輸出額: 前年比 +4.6%(予想 +3.2%)
反応:
国内設備投資意欲の回復が確認され、製造業景況感に追い風。
しかし政治リスクによる不透明感が勝り、指標好結果も相場を支えきれず。




📈 為替・株式・金利の推移まとめ
指標 | 週初 | 週末 | 変動幅 | 備考 |
---|---|---|---|---|
日経平均株価 | 46,636円 | 48,088円 | +1,452円(+3.0%) | 週中で史上最高値更新後、調整入り |
TOPIX | 3,175 | 3,197 | +0.69% | 景気敏感株・輸出株主導 |
ドル/円 | 149.2円 | 153.0円 | 円安3.8円 | 高市相場+米強データで円売り継続 |
米10年債利回り | 4.48% | 4.36% | ▲0.12p | 緩和観測で低下 |
日10年債利回り | 0.92% | 1.00% | +0.08p | 政策期待で上昇 |
🧭 マーケットが示した「3つの潮流」
1️⃣ 政治リスクと経済期待の交錯
「高市相場」で政策期待が急膨張した一方、連立崩壊で一気に現実的リスクが表面化。
この2つの力が市場心理を揺らし、投資家は“期待と警戒”の間でポジション調整を強いられました。
2️⃣ 円相場が全資産に影響
為替が1週間で3円近く変動し、輸出株・内需株・資源関連に明暗。
円安進行時には自動車・機械株が買われ、円高局面では小売・電力・食品など内需株が防御的に機能。
3️⃣ 海外金利低下と株高の「ずれ」
FOMC議事録で利下げ観測が出たにもかかわらず、米株は利益確定売り優勢。
緩和期待よりも「インフレ長期化」懸念が上回り、リスク選好は限定的に。
💬 総括:「期待先行相場」から「検証相場」へ
10月第2週の日本市場は、まさに“期待が現実とぶつかった瞬間”でした。
高市政権誕生を受けた高揚感が一気に噴出するも、週末には政治リスクが冷水を浴びせる結果に。
それでも、株式市場は下値を維持し、「成長政策」への長期的な期待は残っています。
為替市場では円安トレンドが継続しており、海外勢の資金流入も止まっていません。
ただし、連立崩壊に伴う政権運営の不透明感が長期化すれば、外国人投資家の買い姿勢にも慎重さが増すでしょう。
🔮 来週以降の注目ポイント
- 日銀の次回会合(10月17〜18日)への思惑
- 米企業決算シーズン本格化
- 高市政権の初補正予算案の骨子発表
- 連立再編・新パートナー交渉の進展
✍️まとめ
「2025年10月第2週――市場は“政治”に熱狂し、また“政治”に震えた。」
高市新総裁の誕生で日本株は歴史的な熱狂を見せたが、わずか数日後、連立崩壊という現実が市場の熱を冷ました。
それでも、この一週間は日本経済が再び世界の注目を集めた“転換点”であったことは間違いない。
政治の混乱が一時的なもので終わるか、それとも構造的な停滞の序章となるのか。
投資家に求められるのは、「短期の熱狂に飲まれず、政策の実行力と継続性を見極める冷静さ」です。
秋相場は、まだ序章。
次週以降、国内決算と金融政策が絡み合う“第2幕”が始まります。
マーケットの眼は、すでにその先を見据え始めています。
最終判断はご自身で行ってください。
今回も読んでいただき、ありがとうございます。次の投稿で会いましょう
バイバイ



